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執筆者の写真rugsrang

イラン旅行ガイド 2023年版

更新日:6月19日



 新型コロナ関連の規制が徐々に解除され、イランへ旅行したいと思っている方もいらっしゃると思います。コロナ禍の中で毎年イランへ渡航した経験から、イランの個人旅行の実際についてブログ記事にいたしました。イランの情勢は短期間で大きく変わる場合があります。あくまで2023年春現在の情報であることをご承知おきください。


1.検疫について

 2023年3月の渡航の際、イラン入国時に必要とされるPCRテスト結果ないしワクチン証明を、現地空港(イスファハン)で提出を求められたことははありませんでした。もちろん日本での搭乗手続きの際に到着国の規制に応じた証明書類を求められますので、そこをパスしていれば問題無いようです。市町村発行のワクチン証明でも大丈夫です。


 今回の旅行で初めての経験だったのですが、イラン入国時に医療保険への加入を求められました。以前から保険が必要であることは知っていましたが、毎回何も言われなかったので特に加入はしていませんでした。価格は15米ドルないし6ユーロ(大分差がありますね)でした。後述いたしますがイランに国際送金することは非常に困難ですので、現地で怪我や病気で入院等することになると、治療費の支払いや滞在費が足りなくなってしまう恐れがあります。イラン旅行時には現地保険を購入することをお勧めいたします。


2.旅行中の決済方法について

 テロ支援国家とされているイランは制裁のため、銀行間の国際送金はもとより現代の海外旅行の必需品であるクレジットカードの利用ができません。もちろん現地での外貨両替は問題なくできますので、米ドル札持参で4-5年前まではそれほど問題がありませんでした。

 しかし現在ではインフレと通貨安(5年で対ドル10分の1)のせいで、流通の多い50万リヤル札が一枚1ドル程度、最も額面の大きい100万リヤル札で2ドル程度になってしまい、数日分のホテル代ともなると、えらい札束になってしまいます。そもそも現金が銀行・両替店ともにあまり在庫が無いので、500ドル程度の両替でも断られるケースがあります。

 ではイラン市民はどうしているのかというと、ほぼ全ての取引を銀行カードで決済しています。それでも基本的にすべての場所で現金は通用しますが、昨年からテヘランの地下鉄が現金の取り扱いをやめてしまい、カードが無いと切符が買えないため地下鉄にすら乗れなくなってしまいました。(※2024年現在、現金で切符を販売する窓口が再開されています。)


テヘランメトロ ターレガーニー駅 現金で切符が買えなくなってしまいました

 そんな実情ですので旅行客にも使えるカードがイラン旅行に必須になっています。「Iran Debit card」「Iran tourist card」等でネット検索すると、発行してくれる業者が見つかると思います。私自身は取引先からカードを借りているため使ったことがなく、どこが信頼できる業者なのか残念ながらわかりませんが、カードが有ると無いとではイラン旅行の利便性が全く異なりますので旅行前に手配しておくことをお勧めします。なお、チャージは最初の一回きりのようですのでお気を付けください。


 なお、外貨両替店の前にたむろしていて、外人が来ると「ダラール、ユーロ?」と声を掛けてくる人たちは、普段は相場をやっていて、闇両替は副業のようなものだそうです。オンラインのFXは禁止されているため、日がな一日、正規の両替店の前にたむろしているわけです。彼らもおおむね正しいレートで両替してくれるのですが、場合によってはそこから10%もの手数料を請求してくるので、可能な限り両替はお店でした方が良いです。


3.現地SIMについて

 テヘランのイマームホメイニー空港であれば空港内にショップがあります。価格も高くありません。しかし外貨は受け取らないので先に少額を両替店(こちらも空港内にあります)でイランリヤルに替えておくとよいです。

 なお、イラン国内で登録された携帯電話でない場合1か月で使用できなくなります。前回の旅行でこれを知って大変驚きました。以前使えたのに今回どうやっても繋がらない、ということがよくあったからです。イランに何度も旅行したい方はイランの携帯ショップで専用の携帯を買うしかありません。なお携帯の価格は日本や他の国とそれほど差は無く、中国メーカーの安価なスマートフォンで50ドル程度です。

 

 2022年のデモの影響ですべてのSNSがブロックされております。VPNを通すしかないのですが、日本で入れたVPNは接続できない可能性が高いです。現地では携帯ショップでイランでも接続可能なVPNが手に入ります。店員さんのスマホにBluetoothで接続してダウンロードです。日本では信じられない光景でした。



4.イランのホテル


マシュハドダルヴィーシーホテルのレセプション

 海外旅行費用の中で多くを占めるのがホテル代だと思います。イランのホテルは日本や他の西側諸国と比べると星の数は実際より一つ落ちますが、価格はおおむね安価です。

 テヘランの一番高価な五つ星ホテルでシングル一泊80~120ドル程度、メヘマーンサラーと呼ばれるバックパッカー宿のような所ですと5ドル未満です。テヘラン以外だとイスファハンが少し高めで他の都市は安いです。

 ホテルの質は様々で当り外れがあります。安いホテルになるとトイレがイラン式(和式とほぼ同じ)なのはまだ良いとして、臭いがあったり清潔感に掛けていたりということもあります。イラン式トイレがシャワーの排水口も兼ねているというのにはすこし抵抗がありました。グーグルのレビューを自動翻訳して事前にリサーチしておくとよいです。イラン人のグーグルレビューは容赦無いので読んでいて面白いです。


 イランに到着後にホテルを足で回って探すのではなく、旅行前に予約したいとなると外国人向けの旅行代理店を通すしかありませんがこの場合料金が高額になりがちです。

 現地到着後であれば現地旅行代理店でホテル探しもできます(予約サイトで前述のツーリストカードが使用できるかどうかは不明)。しかしイランのホテルはリコンファームが必要なので、その場で即予約が確定しないことにご注意ください。


 ホテルでは、チェックイン時にパスポートを預けます。観光中にパスポートを持っていなくても良いので気楽ですが、日帰りで遠出する場合はパスポート・ビザの携帯が必要ですので、一旦返してもらいましょう。当然のことながらチェックアウト時には返却してもらうのを忘れないように。自分のものかどうか開いて確認もすべきです。


5つ星ホテルの朝食 乳製品の種類が豊富

 日本の旅館の朝飯が一番おいしいように、イランに慣れてくるとホテルの朝食のシンプルなナンとチーズが本当においしく感じられます。高級ホテルでは様々な種類の手作りチーズやバター、ヨーグルトやクリームがあり、イランのナンに良く合います。

 ナンは冷たいまま籠に積まれていますが、探せばキャタピラ式のトースターがありますので、温めるとよりおいしく食べられます。



5.国内線

ボーディングブリッジはほぼありません

 イランは国土面積が日本の4倍以上ある広大な国です。広い国ですので都市間の移動に国内線が使えれば便利なのですが、残念ながらあまり使い勝手がよくありません。


 テヘランから各都市へはそれなりに便数がありますが、地方都市間のフライトが少ないです。ではテヘランで乗り継げば良いじゃないかと考えますが、航空会社数が10社以上あるせいか、ハブ空港で乗り継ぎという概念が無いです。降機したら一度荷物を受け取って外に出て、もう一度出発ターミナルに移動しなくてはなりません。そもそもイランの国内線はオンタイムでの運行のほうが珍しいレベルで遅延するので、テヘランでの当日乗り継ぎは現実的で無いです。

 さらに、スケジュールのキャンセル、時間変更が結構な頻度で発生します。当日キャンセルはさすがに無いですが、2-3日前までは油断なりません。


 航空券は安く、現地で購入するとおおよそ20~30ドル程度です。しかし航空券も例にもれず、旅行前に予約するには外国人向けの旅行代理店を通すしかありません。


 空港での搭乗までの流れもちょっとクセがあります。

 まず、空港に入る段階でセキュリティーチェックがあります。これは空港内の保安目的なので、ハサミやカッターが入っていても大丈夫です。次のチェックインカウンターは普通ですが、預入手荷物の受け取りに半券を見せなくてはいけないので無くさないようにしましょう。独特なのが、セキュリティーに入る前にチケットとパスポートをチェックするゲートがあります。このゲートは航空会社別になっているので並ぶ際には注意が必要です。その後男女分かれてのセキュリティーを通って搭乗ラウンジとなります。

 面食らうのが、テヘランの空港では搭乗手続き開始まで出発ゲートの表示が出ないので不安になります。耳を澄ませて放送を聞いている必要があります。ちなみに遅延しても何分何時間遅れになるのかすらアナウンスがありません。

 しかしテヘランの空港は画像のように、搭乗手続きが開始されさえすれば、出発ゲートの液晶画面に搭乗便の情報が映るからまだマシです。

 マシュハドの空港は液晶モニターが設置されているにも関わらず何も映りません。たまに係員が叫んで知らせています。シーラーズの空港にいたっては搭乗ゲートの画面表示が違うフライトになっていて、危うく乗り逃す所でした。


 イランで飛行機に乗る際は万事こんな調子ですので、チェックインカウンターで同じ列だった人の顔を覚えておいて付いていくのが安全です。

 

 他にも受け取り手荷物が待てど暮らせど出てこず、乗客たちが騒ぎだした頃、表示と違う離れた所のベルトコンベヤーでぐるぐる回っていたり、イランの飛行機について愚痴を言い始めるときりがありません。


イランエアの軽食サービス

 ネガティブ情報ばかりになってしまいましたが、イランの国内線の良い所をひとつ。

 必ず機内で軽食の配膳サービスがあります。この軽食、大抵はコッペパンサンドイッチで、見た目もいまいちですが、食べると十分美味しいです。何より中の具がぎっしり詰まっているのが良いんですよ。日本のコンビニのサンドイッチのように、見える部分だけは綺麗に飾って背面はスカスカといった見た目ばかりの誤魔化しはイランではありません。


6.長距離バス・タクシー

イスファハンの長距離バスターミナル

 飛行機の国内線がこの通りですので、今も昔もイランの個人旅行には長距離バスがつきものです。主だった都市間のバスは基本的には毎日数便運行されており、時間がかかるのさえ我慢できれば確実な方法です。値段も安いです(高くて1000円程度)。シートは広く、国際線エコノミーよりはずっと楽です。


 大都市のバスターミナルだと運航会社ごとのカウンターが複数あり面食らいますが、案内してくれる人がいるので聞けば教えてくれます。満席で乗れなかった経験はありませんが、移動前日に一度ターミナルへ行って翌日のチケットを買っておくのが確実だと思います。

 ターミナルには多数のバスが止まっていますが、出発前に運転手が行先を連呼するので間違えることはないでしょう。

 出発の遅れはよくあります。そういうものだと思ってください。


 仕事で行くと時間が大切なので最近バスは極力利用していませんが、観光旅行であれば移動もまた楽しみの内です。バスの旅は広大なイランを感じられます。

 道中サービスエリアで休憩があります。英語でのアナウンスはないのですが、礼拝したり軽食を摂ったりできるよう、おおよそ30分程度の時間があります。

 公衆トイレは多少のお金を入口で係員に渡す場合が多いです。洗うためのホースはありますが紙はありません。

 サービスエリアには似たようなバスが多数止まっていることがあるので、戻る時に間違えないよう、ナンバーなど撮影しておくと安心です。


 州内の都市間や中距離の隣州の街への移動は、乗り合いタクシーがあります。乗り合いなので、席が埋まらないと出発しません。時間を惜しむのであれば、一台貸し切り(ダルバスト)したほうが良いかもしれません。イランの車の一番良い席は日本と違い助手席になります。微妙に運賃に差があります。

 村々を回るミニバスもありますが難しいです。あまり辺鄙な所へ行くと宿泊も移動もするすべが無くなってしまいますので、村を回りたいのであれば車をチャーターするのが安全です。

チャーター車がエンコした記念写真

7.イランの食事

 イランで食事というとまずはこちらの画像のようなキャバーブです。レストランというとまずはこれです。いくつか種類がありますが、羊肉のひき肉を棒状に伸ばして串焼きしたクービーデや、鶏むね肉をサフランで黄色く色付けしたジュージェキャバーブが一般的です。

 小さな地方都市に行くとほとんどこれしかありませんので、1週間以上になってくると飽きてきます。

 高級なイランレストランでは羊のシャシリークや、羊肉の煮込みがあります。羊の肉は牛や鶏に比べ非常に高価で、時期によってはグラム単価で日本で買うのとあまり差がなかったりします。


 キャバーブ以外のイランの代表的な料理は、羊肉と香草のシチューのゴルメサブズィーや、羊肉ジャガイモ豆等のつぼ焼きにナンを浸して食べるアーブグーシュト(水肉の意)、画像のアーシュレシュテ(柔らかな麺状のものが入った豆のスープ)があります。個人的にはゴルメサブズィー以外は食べきる前に飽きてしまいます。いずれにせよ、かなり立派なレストランでなければキャバーブ以外はありません。


 レストランの価格はインフレに即座に反応します(ホテルはそれほどでもありません)。円安のせいもありますが、ちゃんとしたイラン料理のレストランで食べると800~1000円程度にはなります。これはイラン人にとってはかなり高額なはずです。

 街中のサンドイッチ屋などのファーストフードはこれより安いですが、それでも200~300円くらいを見積もってください。


フライドチキン屋 その名もTFCテヘランフライドチキン


 飽きてくると中華料理が救いになりますが、ちゃんとした中華料理店はテヘランにしかありません。価格はイラン料理レストランの倍はします。テヘランの中国人経営の中華料理屋は味もちゃんとしています。イラン米のぱらぱらとしたチャーハンはおいしいですよ。もちろん豚肉料理はありません。


シールジャーンのキリム屋の息子が経営するカフェ

 飲み屋の無いイランでは、カフェ文化がとても盛んです。圧倒的に紅茶派のイランですがカフェでは本格的なコーヒーを楽しめます。

 また各種スイーツの他、ノンアルコールのカクテル、パニーニなどのイタリア風のメニューもあるので普段西洋文化に慣れ親しんだ我々にはほっとする空間です。旅の合間におしゃれなカフェで休憩するのは大変おすすめです。


8.お土産

 イラン土産には、手織り絨毯も良いですが高額になりますのでピスタチオがおすすめです。サフランも特産ですがパエリア以外にはあまり使わないので持て余してしまうかもしれません。


テヘラングランドバーザールのナッツ屋

 イラン人はナッツ類をよく食べます。ナッツ屋の中でももっとも高価なのがイラン産のピスタチオで、主に南西のケルマーン州で生産されています。ケルマーンのラフサンジャーン産の上質なもので現在キロ2000円程度、4cmはあろうかという巨大な特等品で3000円くらいです。塩をまぶしたものや、サフランで色付けしたものなどもあります。

 量り売りしかありませんが、言えば500グラムくらいずつ別々にパッキングしてくれます。


9.治安

 イラン国内で危険な目にあったことはありません。デモに近づいたり、麻薬関連に自分から入っていかなければ旅行者にとって安全な国です。多くのイラン人男性は女性の前では紳士であろうとしますが、それでも外国人女性の一人旅は不快な目にあうことがありえますので、女性の方はツアー、もしくはパートナーと一緒に旅することをお勧めします。


 イランはいろいろと海外旅行者には不便な国ですが、それを上回る西欧と異なる独自の魅力がある国です。余裕のある計画を立てた上であれば大丈夫ですので、ご興味のある方は、ぜひ一度、勇気を出してイランを訪れてみてください。



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