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キャラートキリムの里を訪ねて

更新日:5月25日


 イラン北東部、ホラーサーンラザヴィー州キャラート地区のアーグダーシュ村を訪ねました。この地域は当店でも販売しているキャラートキリムの産地で、マシュハドの真北、イラン-トルクメニスタン国境地帯に位置します。

 この地域の住民は現地の言葉で「ケルマンジー」と呼ばれる、西のトルコ・アゼルバイジャン方面から移住してきたトルコ系・クルド系の末裔とされます。どうして移住してきたかというと、17・18世紀のアフシャール朝の時代の王、ナーディルシャーによって、北方のウズベク人の侵入に備えるため、この地に屯田のような形で連れてこられたのです。



 こちらはマシュハドからキャラートに向かう道中の動画です。

 この連なるのこぎり型の山脈には切通し部分が一か所あり、そこがキャラートの街の入口となっています。アーグダーシュ村をはじめとするキャラート地区の村々は、この山脈の反対側に点在しているため、そちらに行くには延々と山脈に沿って進み、キャラートの関を抜けなければならないというわけです。そういうわけでキャラートの街は交通の要所となっており、防衛のための城塞が今も残っています。


 キャラートの街を抜けると、このような高地の丘陵地帯が広がっています。

 この高地は前述の山脈でマシュハド側と隔絶されているため、ナーディルシャーの時代以前にはほとんど人が住んでいなかったのでしょう。それゆえに実行支配するためには人をここに移住させる必要があったことが、実際に見ることで感覚として理解することができました。



 道を進んでいくと、舗装路が終わり砂利道となりました。道中、このように羊の群れにさえぎられることが度々。この地域では牧畜が盛んです。


 車に揺られマシュハドから5時間、ようやくアーグダーシュ村に到着しました。マシュハドからの直線距離では75km程度なのですが、前述の通りぐるりと迂回しなければならないことと、道路事情で随分時間が掛かってしまいました。


 村ではそこかしこから羊の声が響いています。牧畜と農業が主要産業です。


 こちらの家では奥様が搾乳、旦那さんが羊毛の刈り取り作業中でした。

 大きな鉄ばさみでジョキジョキと毛を刈っていきます。この画像の刈り取られた部分、これでも一匹の半分が終わったところです。

 ちょうどお昼時でしたので、搾りたての羊乳から分離して作った生クリームでナンをごちそうになりました。とても新鮮でしたので、羊の臭みが気になりません。


 肝心のキリムなのですが、この通りちょうど春の羊毛の刈り取りシーズンだったため、村中そちらの仕事が忙しく、この時期キリムを織る作業はしていないとのこと。残念。

 代わりというわけではないですが、昔から大切にしまっていたというキリムを見せていただきました。

 現在ではウール糸はよそから買ってキリムを織っているそうですが、40~50年前までは村でとれた羊毛から自分で糸にして染色し、材料すべて自家製でキリムを織っていました。


 キャラートキリムのオリジナルはこのアーグダーシュ村で生まれ、この村から近隣の村々にキリム織りが広がっていったそうです。


 キャラートキリムはイランの他の地域ではみかけない、この地域独自のデザインです。平織りキリムですので基本的にはボーダー柄になるのですが、その中に細かに織り込まれている模様は、裏側に別の色の横糸を渡して織り込んであります。


 これらの模様にはそれぞれに名前がつけられております。しかしその名はこの地域で話されるトルコ系の言語でつけられているため、残念ながら私には聞き取れないものがほとんどでしたが、それぞれペルシア語でどんな意味かは教えていただきました。

 一番下のひし形が連なる模様は「イタック」(これだけは聞き取れました)と呼ばれます。その上は「蚊の触角」と呼ばれる模様。言いえて妙ですね。

 その上は、「バフティヤーリー」模様と呼ばれています。

 昔、バフティヤーリーの織物を見たこの地域の女性が、その模様の真似をし、アレンジしつつ自分のキリムに織り込んだ。そしてそれが周囲に徐々に広がっていったわけです。


 こちらの一番下は「コイン柄」模様。その上は先ほどの「イタック」。ボーダー部のギザギザはちょっと汚くてすみませんが、「牛のおしっこ」と呼ばれています。牛は歩きながらおしっこをしますので、ぶらぶらと左右に揺れその跡はギザギザになる、というわけです。


 この通り、この呼び名は模様の意味というわけではなく、あくまでもデザインに対して付けられた呼び方でありましょう。コイン柄などは「家族に富が舞い込みますようにという願いを込めて」なんて歯の浮くような絨毯の売り文句が頭に浮かんできますが、「蚊の触覚」や「牛のおしっこ」ですから、特に何か意味を込めたというものではなさそうです。

 ちなみに、村名の「アーグダーシュ」とはトルコ系の言葉で「白い岩」を意味する言葉だそうです。


 インスタグラムにも投稿しております本記事の最初の画像のキリムを、このアーグダーシュ村で買い取りました。これは写真の右に立つおじいさんのお母さんが結婚する際に、おばあさんから贈られたキリムだそうで、最初は家の記念の品だから売らないとのことでしたが、お願いしたところどうにか売ってもらえました。状態の良い年代物のため価格もそれなりに高いため、販売するか私個人の所有とするか悩んでいるところです。


 一方で、現代品はその手の込んだつくりの割には安価に手に入ります。マシュハドの絨毯商より各サイズ仕入れしておりますので、入荷の際には当オンラインショップでご紹介いたします。

 キャラートのキリムの落ち着いたアースカラーの色合いはインテリアに合わせやすく、またピクニックやキャンプに持っていっても良く映えます。ぜひお試しいただければと思います。


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