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シールジャーン ユネスコ無形文化遺産のキリム



 今年2017年、新たにイランからユネスコの無形文化遺産にケルマーン州シールジャーンのキリム織りが登録されました。イラン国内の絨毯系だと、タブリーズ・カーシャーン・ファールスについでの登録になります。

 ということで(実はイランに到着してからこのニュースを知ったのですが)、シールジャーンの街へと行って参りました。

 シールジャーンは州都ケルマーンから南東へ160km程に位置する、鉄鋼石・銅鉱石を産出する鉱工業で栄える街です。他にはピスタチオとキリムの産地として有名です。人口はおよそ32万人。市内にふたつの大学を有します。私の住む秋田市と同規模なのでちょっと親近感がわく都市サイズです。

 この地域のキリムは日本では「シルジャンキリム」との名で販売されていますが、ペルシア語の発音に正確に表記すると「スィールジャーン」(“命に飽いた”の意:おそらくそれほど過ごしやすい土地ということと思われる)です。ここでは旅の必需品グーグルマップの名称にのっとって「シールジャーン」と表記したいと思います。

 朝ケルマーンのホテルを出発。ケルマーンからは乗り合いタクシーに揺られて2時間くらいです。乗り合いは客が4人来て満席にならないと出発しません。イラン国内製の小さなプジョーの後部座席に3人詰め込まれるので、長時間のドライブだと後部は結構きついです。しかも4人目のお客がなかなか来ない。そこで私が二人分の運賃を払って出発してもらいます。みんな喜ぶし快適だし時間も短縮、燃費も向上と、いいことづくめ。運賃450円が900円になるだけなので、よっぽどの節約旅行でなければおすすめの方法です。


 10時位に到着。この通りの平凡な街並み。乗り合いのターミナルでタクシーを乗り換え「手織り絨毯屋に連れて行ってくれ」と頼みます。こういう地方都市だと観光客向けの絨毯屋なんて存在しないので、こんな方法でも大きく外れたことはありません。


 で、着いたのがここ。店主のおっちゃんが、運転手に「俺英語話せないんだよなぁ」なんてぼやいてます。私はずっとペルシア語で話しているんですが、そんなに下手なのだろうか私・・・。

 実は小さな店構えだったのでちょっとがっかりしたのですが、別の倉庫に在庫がいっぱいあるよということなのでひと安心。


 朝から結構忙しいようで、ひっきりなしにお客さんが来ます。お客さんといってもキリムの織り手が糸を買いに来たり、逆にキリムを売りに来たりです。計量器の糸の価格を盗み見ると、kgあたり530,000リヤル(約1,500円)でした。現地の物価を考えると決して安くない価格です。パイルのある絨毯だと㎡あたり2~3kgはありますし、パイルを刈りこむ前だとその倍はあると思います。店主に聞くと、ウールはカーシャーンから草木染のものを仕入れているそうです。


 ひと段落ついたので、店主ヘイダーリーさんの自宅の地下にある倉庫まで案内してもらいました。途中、別の家に寄って仕上げ洗い立ての新品キリムも持ってきました。写真はヘイダーリーさんと大学に通う英語の話せる娘さん(父親から無理やり呼ばれてました)。

 在庫はすべてシールジャーン地方のキリムです。細やかな柄がとても素敵な品々です。またこの地域ならではの一部絨毯のようにパイルを格子状に結んであるゲリームファルシュ(訳するとそのままキリム絨毯)もあります。ついつい結構な量を購入して予算オーバー気味に。

 ちょうどお昼だったので、そのままご自宅にお邪魔してお昼をごちそうになってしまいました。イランではタアッロフといって社交辞令でお茶や食事に誘ったり、「コレ君にあげるよ」なんて見栄で言ったりする習慣があるので、本気かどうなのか分からず結構苦労します。二、三度断ってみて、それでもどうぞどうぞと言って来たら、お言葉に甘えることにしています。

 グーグルマップ上に、絨毯キリム博物館というのがあったので、そこに行こうと思っていると話すと、まだ建設中でオープンしていないとのこと。残念。けれどもその後、キリムを織る家庭に連れて行ってくれることになりました。



 昼食を終えて街はずれに向かいます。

 シールジャーンでは、絨毯を織る家は中心部ではなくダウンタウンの裕福でない地区にあります。これはシールジャーンに限らないことで、現在のイランの家庭で織られる絨毯は、現金収入の必要な農村部か、都市住民の中でも裕福でない層の人たちがつくるものになっていると思います。


 この地方のキリムは水平式織機で作られます。垂直式と違って簡単に持ち運びができるため、もともとは遊牧民が使う様式です。現在ではほとんどが定住民によって作られていますが、これはこの地方にいた遊牧民アフシャール族の影響じゃないかなと思います。


 経糸に模様となる糸を巻き付けていく、スマックと言われる技法です。イランではスーマークないしソウマークと発音し、右から左にسوماکと書きます。立ての棒状の文字「ا」は子音の後につくと長母音となりアーと読みますが、アルファベット表記にするとsoumakです。そのためスマ「ッ」クと言うようになったのでしょう。

 模様となる糸を横糸とは別に結び付けていくので、その点においては工数的にパイルのある絨毯とほぼかわらない手間がかかります。それに応じて価格も平織りのキリムよりもずっと高価になります。

 それにしてもこの水平式の織機でのキリムづくり、腰や背中が痛くなりそうなきつい作業です。


 シールジャーンの見どころのひとつ、チョッポギのバードギール(採風塔)。蒸気船の煙突のような形状が珍しいものです。この街の初めてのお医者さんの家に作られたものだそうです。

 あいにく足場がかかっているし、何よりカメラが壊れてスマホの撮影なのでイマイチな写真で申し訳ありません。

 他に見どころといってもそれほどない街ではありますが、のんびりとした良い街です。それに、なにより魅力的な独自のキリムを織る文化を持つ街です。今度は一泊二泊ゆっくり滞在したいな、と思えた小旅行でした。


 シールジャーンのキリムといえばこのデザイン。ラフラなんて表記を目にしますが、ラーハラーハのことでしょうか。「しましま」という意味です。ラーハとは道のこと。「みちみち」ですね。ペルシア語には日本語のような繰り返しの単語が結構あります。「色々な」はランガーラング。ラングは「色」という意味なので全く一緒で面白いです。


 シールジャーン産のキリム、間もなく当オンラインショップにてご紹介できます。もう少々お待ちください。

#ケルマーン州 #シールジャーン #キリム #スマックキリム

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