
10月に再びナインにあるシェルキャットファルシュのペルシャ絨毯工房を訪問してきました。
テヘランの南バスターミナルから、がらがらの夜行バスで5~6時間 程。まだ早朝の暗い時間帯にナインへ着きました。こんな時間でもバスを降りると地元のタクシーの運転手たちの客引きが始まります。その中に偶然見知った顔が。前回訪問時に、市内を案内してもらったレザーさんの顔を発見。彼にとりあえず宿泊予定のホテルまで送ってもらい、午後からの貸し切りタクシーをお願いしました。

アポイントメントの時間までホテルのロビーで待たせてもらった後、歩いてすぐのシェルキャットファルシュの事務所に向かいます。そこで所長シャフリヤーリー氏と久しぶりの再会を喜びました。
ですが気になることが。1階の工房ががらんとしています。何事か尋ねると、絨毯を作るときに出る金櫛で叩く騒音のため、近隣から苦情がひどかったそうで只今引っ越し中とのこと。
新工房は道路を渡ってすぐのところにありました。そこはもともと工場だった建物で広々としています。隣地とも離れているのでここなら騒音も大丈夫 。立派な工房です。多くの女性たちがせっせとパイルを結んでいます。今つくっているのは8laだそうで、8本撚りの経糸を使うもの。一般に知られるナインの絨毯は9la、6la、4laでが、8laを使用することもあるのは初めて知りました。
所長から再三、今つくってるなかでどのデザインが好きかと聞かれます。どれも素晴らしいので迷うのですが、濃紺のフィールドのメダリオンコーナータイプのナインの絨毯を好む人が日本では多いよ、と答えます。

シェルキャットファルシュのペルシャ絨毯に使われる複数色のシルク糸。天然染料で染めたものです。一般的なナインのペルシャ絨毯よりもシルクの色数、使用量ともにかなり多いです。

こちらはパイル用のウールの倉庫。これは9laの絨毯に使われるパイル糸。9laとは9本撚りの綿の経糸を使用したタイプのことです。

そしてこちらは6laの経糸の絨毯用にパイルとして使われるコルクウール糸(子羊からとれる柔らかい毛)。6laは6本撚りの細い綿でできた経糸のこと。

このパイル用コルクウール糸は2本撚りなのが特徴です。より細かくパイルを結ぶことができます。

一通り新工房を見せてもらった後、旧市街モハンマディーエ地区にある経糸張りの工房へ見学に連れて行ってもらいました。ここで張った経糸を工房に持って行って織機にセットしているのです。

この道50年の職人さん。何度も往復して糸を張り、その後一本一本を互い違いにしていきます。

経糸張り工房の前の景色。畑の向こうにはアーブアンバール(地下貯水池)が見えます。カナート(地下水路)で引いてきた水を貯めています。
この後、絨毯の仕上げをする工房へと向かいました。
都市の絨毯は織りあがったあと、一度洗います。そして大量の水を含んだ重い絨毯を一度脱水機に掛けてから干します。

このように石で留めた後、

ぐるぐる~と脱水。ガランゴロンとすごい音。

取り出して

広げて干します。12㎡でやたら重たいです。

こちらが仕上げの工程。表面のパイルを均等に刈りこんで、輝かせます。
仕上げ工程を見学した後、ナインの街に数多くある礼拝所のうちのひとつを訪れました。

丸いドームのある礼拝所の建物。

中に入るとさすがペルシャ絨毯の街ナイン。モスクの内壁にはペルシャ絨毯のモチーフが描かれています。美しい。

そしてこれ。礼拝所の寸法にあわせて作られた巨大な八角形のゴンバッド模様の絨毯。実は機械織なのですが、それでも作るのには大変な苦労があったそうです。この絨毯をデザインしたのがシャーリー氏。ナイン在住で50年以上にわたり絨毯の図柄を描いてきたベテランデザイナーです。


そしてナインのシェルキャットファルシュのペルシャ絨毯はすべて、彼のデザインによるもの。どれも奇をてらわないオーソドックスなデザインですが、バランスが良くてとても繊細な印象を受けます。
シェルキャットファルシュで持っているデザインの中からであれば、注文して作ることも可能です。
見てきた通り、この街ではパイルを結ぶ織り子だけではなく、デザイン・経糸張り・洗浄・仕上げ・販売など絨毯産業にかかわる様々な仕事に多くの人々が従事しています。

3枚のナインシェルキャットファルシュ製のペルシャ絨毯を仕入れて参りました。ゴンバッド1.5㎡の6laが一枚と、3㎡の9laと1.5㎡の6laのそれぞれ同デザイン色違いです。ボーダーのカラーが異なります。どちらもとても美しいです。
ショップにて販売中です。是非ご覧ください。