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南ホラーサーン州南部ネフバンダーンの絨毯とテントづくり



 イラン東部の南ホラーサーン州の最南端のネフバンダーン郡の中心都市、ネフバンダーンへ訪れました。ビールジャンドとスィースターン・バローチェスターンの州都ザーヘダーンの間にある街です。


 案内してくれたネフバンダーンの観光局長によれば、“ネ”とは昔の言葉で “街” や “人の住む所” を意味していたそうです。“バンダーン” のほうは “バンド・紐” から “結び付けられた” とか “繋がった” という意味で、この辺りの人の住むところがまとまって “ネフバンダーン” と名づけられたそうです。これは有名な歴史的都市のネイシャーブール(ニシャプール)も同じで、“ネ(街)” + “シャープール(ササン朝の皇帝)” つまりシャープール1世によって造られた街であるとのこと。

 話変わって、世界で一番暑い場所は、アメリカのデスバレーだとかエチオピアにあるとか諸説ありますが、実はネフバンダーン郡のルート砂漠もそのひとつです。ここはNASAの衛星から観測した地点としての世界最高気温71℃(!)の記録を持っています。世界中どこでも温度計が設置しているわけではないので、衛星からの計測というのはかなり「本当の世界一」に近いのではないでしょうか。

 ペルシャ語にも「暑い」と「熱い」があるのですが、日本語と違ってすごく暑い場合は「熱い」のほうを使うところに、厳しい気候の土地柄を感じます。


(街外れにある世界最高気温記録をイメージした?オブジェ)

 面白いのがビールジャンドからネフバンダーンに来る途中、ムードの街を過ぎるとセルビーシュという街があるのですが、このセルビーシュはとても涼しい所なのです。そこからわずか100km南に下ると世界一暑い場所。それほど標高差があったようには思えないので不思議です。


(田舎町ネフバンダーンの街並み)


 写真には撮れませんでしたが、赤いカラフルな衣服をまとったバルーチの女性たちが歩いているのも見かけました。

 まずは早速この街の絨毯を見に行きます。



 ネフバンダーン市内と周辺の村々で織られた絨毯は一旦この街に集められ、それをビールジャンドなりマシュハドなりの絨毯商が買い付けに来ます。そのような倉庫に案内してもらいました。かなりの在庫があったのですが、今回は現地調査メインだったため充分な時間が無く、挨拶代わりに仕入れたのは画像の1.5平米のジョフト(2枚組)だけ。内1枚はまだ当オンラインショップに在庫がございます。


 こちらは地域の手工芸品を集めた倉庫にて。このバルーチのオールドキリム、今こうして写真を見返すとやっぱり仕入れてくればよかったな、と少し後悔しています。テヘランではヨーロッパで使われた絨毯やキリムを引き取り、イランで修繕して再度輸出するビジネスがありますが、ここのものはあくまでも織った家庭か、この地域の中で売られ使われたもの。砂だらけではありますがそれは洗えば大丈夫。イランでは屋内に土足ではあがらないのでユーズドでも痛みが少ないのです。

 ネフバンダーン市内には絨毯を織る家庭はかなり多いようです。絨毯を買った後で何軒か案内してもらいました。



 垂直式の織機をペルシア語でダールという言い方をします。絞首台もダールと言います。うーん。。。


 家に入る時に男性の訪問者は「ヤー!アッラー!」と声を掛けて入ります。日本語なら「ごめん下さい!」なんでしょうけれど、この「ヤー!アッラー」の声を聞いて家の女性はチャードルやルーサリーを被るのです。

 その後、ネフバンダーン観光局長自ら、郡内にある半遊牧・半定住の村を案内してくれるとのことで、ネフバンダーン市から北西のセイエダールという村に向かいます。


 道中のダーシュト(草原・荒野)。スマホ撮影のため伝わりませんが雄大な風景が広がります。目の前をカランカランと首につけたベルを鳴らしながら、山羊と羊の群れが通り過ぎます。この時は秋だったのですが、今頃(春)には雨が降って一面の緑へと変わり、さぞかし美しい景色が広がっていることでしょう。


 セイエダール村に到着。イラン系の半遊牧生活を営む人々の暮らす村でした。


 これは実際に作る所を見るのは珍しい、チャードル(黒テント)織り。簡単には水を通さない丈夫な黒ヤギの毛で作られていて、イランで遊牧民のテントというとまずはこれで出来た黒いテントのことを言います。


 訪れたのは秋でしたが、日光の厳しい中、外に置いた水平式織機で織っていました。織機は木材で、というより、日本では木材とは言わないレベルの、ただの曲がった棒で組んだもの。彼らの生活範囲には木というものがほぼ生えていないので、こういった灌木の太めの幹を利用しているのです。すごくプリミティブな雰囲気を醸し出していますよね。はるか昔から同じ道具で同じものを作ってきたのでしょう。

 このおばちゃんに、「これは自分で使うのですか?」と聞いたところ、「自分のも作るけど、これはアラブに売る分だよ」という答え。「アラブ?ふーむ、イラクあたりに輸出するのか。」とその時は思いましたが、今考えるとそうではなくてイラン国内のアラブ系の遊牧をしている人々に売るという意味だったのかもしれません。


 このセイエダール村でも絨毯を織っていました。半遊牧民とのことだったのでトライバルラグ系を期待していましたが、そうではなく、いわゆる“ムード”のデザインで垂直式の織機で織られていました。


 こちらは機織り機でパールチェ(木綿の布)を織る村の娘さん。画像の左に使い込まれた糸車も映っています。この地域では、現在でも様々な昔ながらの手仕事が残っているのです。

 ちなみに敷いてあるカーシャーン風の絨毯は、機械織りです。今まで絨毯を織る家庭を相当訪問してきましたが、手織り絨毯を自宅で敷いていた家は見たことがありません。イランで本物のペルシャ絨毯を敷いているのを見たのは、テヘランなどの都市部の、中でもアッパークラスのお宅か、絨毯商の家を訪ねた時くらいです。一般に、絨毯を織っている家庭は経済的に裕福ではないので、手織り絨毯のような高額な品を敷くことはしません。

 ネフバンダーンをはじめ、南ホラーサーンの絨毯は安価です。織りは工房もの程ではないですが、1平方センチに6×6の結びのものが一般的で、同クラスだと普通のナインのノーラ(9la)より2割以上も安い。デザインはタブリーズに似ている(けれど少し違う)マーヒーが多く、渋めを好む私たち日本人には好ましく見えると思います。次回も南ホラーサーン州から仕入れて来たいと思っておりますのでご期待ください。


 (ネフバンダーン近郊のマリーヒー山地の奇景)


 (ドライバーのマジド氏とビールジャンドの謎の蛇口オブジェ)


 今回の記事を書くにあたってネフバンダーンを検索していると・・・「あれ、これ俺じゃん!」自分を発見。

 地元のニュースサイト的な、ネフバンダーンハバルというサイトで今回の私の訪問が取り上げられていました。ニュースの見出しは「日本の商人がセイエダール村を訪れ手工芸品を購入」。そういえば観光局長に写真撮られてたし、それに滅多に外国人は来ないだろうしなぁ。ドのつくマイナーな所だし。

 でも絨毯を作っているところならイラン中どこでも、巡りたいと思っています。今はそれが楽しくて、どんな田舎に行くのも苦ではないです。

#南ホラーサーン州 #イランの街 #イランの村

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